2016.12.23

融資を引き出す事業計画書の作り方

事業計画書

開業に必要な資金を調達するにあたって、融資を受ける際に必須となるのが事業計画書。事業計画書は、クリニックの未来の姿を資金繰りの面から予測して作成します。収入・支出の各項目を設定し、開業後の経営の成功への道筋を示すことで、融資を引き出すことができます。開業後のクリニックの課題を検証することにも使えますから、ぜひ開業準備として、自身のクリニックの事業計画書を納得のゆくまで作りこんでみましょう。

融資を引き出すのは、堅実な計画と、成功への熱意

事業計画書は、クリニックの計画がどのような収支結果を生み出すのかを描くものです。しかし、クリニックの収支結果といっても、クリニックを取り巻く経営環境はどうなるかわかりませんから、様々なパターンが考えられるはずです。

「半径数百メートルの住民が年に一度患者さんとして来たとしても、これだけの収入があるはず」 「近くに同じ診療科目のクリニックができてしまったら、収入は半減するのか?」 「うちのクリニックの診療科目は特殊だから、隣町からの来院もあるかも?」 「医療設備を買い替えるときには、想定外の出費があるのか?」 経営環境については、良い推測も悪い推測もできますが、事業計画書を作成するにあたっては、できるだけシビアな条件を設定するのが基本です。

さらに、事業計画は一つではなく、リスクや自信度に応じて複数パターンを用意するのが良いでしょう。最悪のパターンに触れたとしても、想定内であり、経営には問題ない、したがって確実に資金返済が可能であるという慎重な姿勢を見せることで、よりスムーズに融資を引き出すことができます。

一方で、クリニック経営成功に向けての院長先生の夢や熱意を事業計画書で表現することも必要です。基本的に融資担当者は、融資する相手の事業を応援したいという気持ちで臨んでいます。院長先生の実現したい医療や、それを待ち望んでいる患者のいることなどを、開業理念やコンセプトとしてまとめ、別途提出するのもよいでしょう。

事業計画に必要な条件設定

事業計画作成にあたって、以下のような内容を数値として出しておく必要があります。

施設・設備等開業時の投資条件

開業する場所や、クリニックの施設・設備への投資に必要な項目です。

土地・建物を購入する場合はその費用、間借りする場合は家賃・敷金、礼金、仲介手数料、内装工事費用や診療に必要な設備を書き出しましょう。クリニックに必要な面積や慎重に必要な設備については、診療科目によって異なります。医療機器は一般的に定価が意味をなさず分かりづらいことが多いので、信頼できるコンサルタントや開業している先輩院長に尋ねるなどして調べましょう。

資金手当て及び融資条件

開業に必要な資金調達をどのようにするか、という内容です。自己資金、外部調達、親族からの借り入れなどを合計して必要な資金に達するよう設定しましょう。

開業後の患者数や診療単価などの収入条件

診療圏調査の結果や勤務医時代からの患者、前職場からの紹介見込みなどから見込まれる患者数を算出し、診療単価を掛け合わせておおよその収入を算出します。

開業して間もなくはクリニックの存在が周知されていないため、診療圏調査の結果通りの来館が見込めない場合が多いですが、数年かけて緩やかに患者様が増加していきます。診療圏調査の結果から、患者数はやや保守的に見込んでおきましょう。診療日数と休診日を同時に設定しておくことも大切です。半日の違いでも、数年で大きく収入が変わるからです。

材料費、人件費、一般経費等の支出条件

診療に必要な備品やスタッフに支払う給与、水道光熱費、医師会の入会費、広告費、HP作成費、コンサルティング費などの経費です。開業してまもなくは、広告の費用対効果は高まりますので、ここで広告予算を下げすぎてしまうのは危険です。

スタッフの人件費などは、見込まれる患者増加に伴って徐々に増やすことを想定しておくのが一般的です。

生活費や税金支払いなどの条件

院長先生の収入は事業利益から支出されます。住宅ローンや子供の教育費などを考慮し、生活費を決定しましょう。家族の意見も聞きながら、ライフプランを事業計画に組み込むのが重要です。

ただし、開業後数カ月は赤字が続くクリニックが多いのも事実。その時期を無収入で乗り切るわけにはいきませんから、ある程度の運転資金を用意しておきましょう。 これらを列挙したうえで、収支のバランスがとれているか、最終的に院長先生の手取りがいくらになるかを計算します。これらを書き込むのは表計算ソフトで行うと、修正が簡単ですのでお勧めです。

収支が合わない場合は、例えば初期導入設備を見直して投資を絞る、連携先を開拓したり広告に出資したり見込み患者数を増やす、開業場所を変更して良い市場を見つける、スタッフの配置や労働条件を見直すなどの検討を行う必要があります。

ここで注意したいのは、あくまで現実に即して計画を修正していくということです。

例えば見込み患者数を増やすために開業場所を変更するのであれば、家賃や土地の取得にかかる投資額は増えるかもしれません。初期導入設備を減らせば、その分見込み患者が減る可能性もあります。スタッフの配置が少なすぎ、現実的にクリニックの事務を回せない状態であれば、スタッフは定着せず患者様からの評判が落ちることも考えられます。

修正したことへの影響を考慮せずに、一つの数字だけを修正してしまうと、都合は良くても現実に合わない事業計画書になってしまいます。最悪の場合は、開業後に資金繰りが破たん、クリニックを閉めるということにもなりかねません。あくまで地に足をつけた事業計画書を目指しましょう。

クリニックの収支構造は「固定費型」

事業計画を策定するにあたり、理解しておきたいのは「クリニックの収支構造は『固定費型』」だということです。

分かりやすいように、小売店の経営と比較して考えてみましょう。 「固定費」は、収入とは関係なしにかかるコストのことで、人件費や家賃、設備購入費などを指します。

その逆は「変動費」で、これは仕入れにかかる費用のこと。クリニックでは薬品費などに当たりますが、小売店では商品の仕入れが莫大な額になります。つまり、小売業では商品をたくさん仕入れれば仕入れるほど売り上げも上がっていきます。

クリニックは「固定費型」で、さらに初期投資も多い業態です。しかし、収入は固定費と関係なく積み上がっていきます。つまり固定費をまかなえる収入に達するまでの間は大変ですが、利益が出始めればその後は利益率が高くなっていくビジネスモデルだといえるのです。

したがって、クリニック事業は、収支構造的に固定費をできるだけ抑えて小さくスタートするほうが、健全な経営につながりやすいのです。

さらに運転資金として、できるだけ潤沢な資金を用意しておく必要があります。運転資金とは、開業後の赤字をカバーするための資金です。一般的に、開業直後から黒字を達成するクリニックはあまりなく、数カ月の赤字は覚悟しておかなければなりません。加えて、診療報酬は請求の2か月後に払い込まれるため、その期間を乗り切るための運転資金が必要なのです。「確保しておくべき運転資金は診療報酬額の2、3カ月分」と言われることもあるようですが、その額にこだわらず、大目に運転資金を用意しておくことで、安心して開業直後を過ごせるでしょう。

まとめ

理想のクリニックづくりを、と考えるとどうしても開業前の投資額は増大しがちですが、過大投資とならないよう慎重に計画を立てる必要があります。なぜなら、事業計画における負債や経費はおおむねそのまま現実となりますが、収入や利益はあくまで期待値。悪意のあるコンサルタントは、意図的に甘い計画書を作成し、多額の投資を盛り込んでくることもありますから、注意が必要です。

ポイントは、収入予測はシビアに行い、設備投資や固定費の導入は必要性をきちんと検討してから決定すること、不要不急の投資は開業後に判断することです。

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