2017.01.12

医療機器の調達は、リースと購入、どちらにすべき?

リースと購入

クリニックを開業する際、必要となるのが医療機器です。揃えるには大きな費用が伴いますから、どう調達するのかは、その後の経営にかかわる重要な選択になります。調達方法としては、リースと購入の2つの方法があります。購入といっても、その資金は銀行からの借入金でまかなう場合がほとんどでしょう。借入金を増やして機器購入するか、あるいはリースにするか。開業時の重要なテーマとなるこの問題について、今回はじっくり解説していきましょう。

リースor購入?メリット・デメリットを徹底比較

購入とリースのどちらがよいのか。これを考えるには、まずそれぞれにどのようなメリット・デメリットがあるのかを知る必要があります。

購入する場合、先生方がいちばん気にされるデメリットは、「最初に銀行から多額の借入金を用意する必要がある」ことです。このため「借金が不安だ」という先生には敬遠されがちです。

とはいえ、リースにした場合、支払い総額は高くなるのが一般的です。 リースの仕組みを少しご説明しますと、一般的にリース料は、物件の取得価格にリース期間中の金利、固定資産税や保険料を加えて計算されます。そのリース料総額をリース期間(契約月数)で均等割りしたのが月間リース料になります。もし1000万円の医療機器を、5年間、リース料率1.85%でリースした場合のリース料総額は、


医療機器などの販売価格×リース料率
=10,000,000×1.85%=185,000円(=月間リース料)

5年間で支払うリース料
=185,000×12か月×5年=11,100,000円


となり、リースにした場合の支払い総額は、購入した場合よりも高くなるのです。 また、リースの場合は銀行への返済に比べ短期間で返済する必要があるため、月々の支払い額が高くなりがちです。開業当初の資金繰りが難しい時期に、月々の支払いが多くなると運転資金が枯渇しかねないので、注意が必要です。

一方で、やはりリースの場合、最初に多額の資金を準備しなくてもよいという気軽さは魅力です。また、購入の場合は機器買い替えの際、廃棄するのに費用と手間がかかるのに対して、リースだと気軽に最新機器に契約更新できるという点も、リースの大きなメリットでしょう。さらに会計処理に関しても、購入の場合は償却資産税、減価償却費用や損害保険料といった複雑な処理が必要なのに対して、リースの場合は全額を経費にするだけで済むなど、処理も簡単です。

以上のような購入とリースのメリット・デメリットを一覧にまとめると、次の表のようになります。

メリット デメリット
購入

・リースより安い金利で資金調達が可能なため、支払い総額はリースより安く済む。

・月々の支払いがリースに比べて安く済むことが多い

・取得価格500万円以上などの場合、医療機器に対する税制上の優遇措置を受けることができる

・多額の借入金が伴う

・機器を最新のものに買い換える際、旧式機器を買い取ってもらうか法に基づく廃棄処理が必要となり、手間や料金がかかる

・償却資産税、減価償却費用や損害保険料などの計算など、会計処理が複雑になる

・資金調達の際に変動金利を選んでいると、金利の変動の影響を受けることがある(一般的には固定金利が多い)

リース

・銀行からの借入枠をキープできる

・初期資金を別の投資に回すことができる

・会計処理が簡単(全額経費として処理できる)

・リース期間終了時に、新型の機器に契約更新することが手軽にできる

・廃棄処理するための手間や料金がかからない

・リース料は月々一定なので計画的なコスト管理ができる

・支払い総額は高くなる

・医療機器に対する税制上の特別償却制度などの恩恵を受けられない

・資金の借入に比べ、リース期間が短いために短期間に返済を終えねばならず、月々の支払いが増える

結局どちらがよいの?判断する際の考え方

結局、リースと購入のどちらがよいかは、正直なところケースバイケースなのです。先生自身が目指したい医療の姿によって、何に投資をするのか優先順位が変わってきます。一般的には、もし先生が、

  • 開業資金に余裕がある
  • 支払い総額を抑えたい
  • 月々の運転資金を確保したい

といった場合は、購入を検討されるほうがよく、反対に

  • 開業資金に限りがあり、ほかの投資に使いたい
  • 機器のバージョンアップの頻度が多く、短いスパンで買い替えることになりそう

という場合は、リースのほうがよいということになります。実際には、会計面は複雑になってしまいますが、購入する物品とリースする物品を取り混ぜ、柔軟に対応していくことも考えられるでしょう。

考え方の具体事例

リースか購入かに関して、より具体的にイメージしていただけるよう、事例をひとつご紹介しましょう。

消化器内科でクリニックを開業予定のA氏は、理想のクリニックの実現に向けて、内装工事や医療機器の選定など検討を進めていました。見積りは、内装工事に50坪で4000万、医療機器は3500万となり、運転資金やその他もろもろの投資を含めると、開業時の総投資額は1億円。これを、1000万円は自己資金でまかない、残りの9000万を外部からまかなうという計画を立てました。

医療機器については、当初は借入額を増やしたくないという先生自身の心理的理由から、3500万のうち3000万をリースで、残り500万を借入でまかなう計画を立てられていました。 しかし、当社で試算したところ、見込まれる患者数では運転資金が不足する恐れがありました。医療機器について、3000万のリース代金を5年間で支払うことになるため、元金部分だけで年600万の支出になってしまいます。

そこで、健全な資金運用のためにも、総投資額を減らす、もしくは月々の支払額を減らすため、リースよりも長期の返済期間で借りられる銀行からの借入による購入をお勧めしました。

結果的に、A氏は、ご自身の理想のクリニックを追求するために総投資額を減らすのは難しいと判断。その代わり、医療機器の見積もり3500万のうち、長期間使用できる機器を銀行からの借入金2500万で購入し、短いスパンで買い替えが予想される電子カルテなどの機器を1000万のリースで調達されました。

当初予定より借入金は2000万円の増加となりましたが、長期の返済プランで借り入れることができたために、毎年の返済額が抑えられました。

まとめ

いかがでしたか? 具体的な事例でご説明したように、同じ機器を揃えるにしても、どのように揃えるかによって資金繰りが大きく変わってきます。初期投資のコストダウンは重要ですが、開業後は支出をできるだけ抑えた方が心理的にも経営的にも健全と考えると、リースが良いとは一概にいえない部分があります。両方のメリット・デメリットを考慮し、そのバランスを見極めることが大切です。先生自身で決めかねる場合は、早い段階で、会計事務所や専門コンサルタントにアドバイスを求めるようにしましょう。

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