2016.12.05

開業後の成功を決める「コンセプト」設計とは?

コンセプト設計

これからクリニックを開業しようという先生方に最も伝えたいことが「コンセプト」の大切さです。「どんなクリニックにするのか」「どのような特徴を打ち出していくのか」といった「コンセプト」は、患者様がそのクリニックを選ぶ基準になるだけでなく、先生自身が今後様々な経営判断をする上で、最も重要な指針となります。

多くの先生は、コンセプトがあいまいなまま、なりゆきで開業してしまいがちですが、そのような「なりゆき経営」は、「医院経営の最大の失敗要因」と断言できます。
今回は、コンセプトが大切な理由をじっくり解説した上で、コンセプト設計の具体例をご紹介したいと思います。

医院経営における「コンセプト」とは

「コンセプト」と聞くと、何か響きのいい表現にしないといけないと身構える先生方もいらっしゃいますが、その必要はありません。 コンセプトとは、「どのような特徴を持ったクリニックか」を明確化したものです。
「自分の理想とするクリニックは?」
「開業をすることで何を実現したいのか」
「どのような特徴を持ったクリニックにしたいのか」
「どのような患者様に来てもらいたいのか?」
ということについて、自分の経歴やスキル、強みや弱みなどを客観的に評価しながら考えを整理し、言葉にまとめたものであれば十分です。

コンセプトがもたらす効果

コンセプトを持たない経営は、いわゆる「理念なき経営」であり、悪い結果しか生みません。なぜコンセプトが必要なのでしょうか?以下では、コンセプトの効果を具体的にご説明します。

開業時のスタイルや具体的な投資判断となる

開業場所やクリニックのスタイル、施設・設備の内容や規模、また人員体制や全体の必要資金など、開業における選択のほぼすべての要素は、コンセプトに基づいて決められるべきです。

例えば、特定の疾患の診療を専門にするクリニックであれば、その患者さんが通いやすく、他に同様の診療科が少ない立地を選択し、その診療のために必要な施設規模を確保すること、その診療に必要な医療機器を十分に導入することなどが必要です。さらにその専門性を担保するスタッフの確保が必要となる場合もあります。

多くの先生方が明確なコンセプト設計を行わず、

「このくらいの大きさの場所が借りられたから、このくらいの待合室と診察スペースを確保できる。そうするとレントゲンはこのタイプの大きさのものが入れられて…」

というように、外部環境ありきの「なりゆき」で決められているようです。ですが、そうすると様々な選択の場面において、結果として無駄な投資を生んでしまいます。

例えば、上記の例でいけば、本当に診察室は一つで大丈夫でしょうか?

1日の患者数が40人~50人で十分なのであれば診察室は一つでもいいかもしれませんが、60人、70人と診ていく場合や、医師を採用して2診で診ていく場合は2つの診察室を準備しておく必要があります。またカウンセリングルームや相談室など患者さんの話をじっくり聞くための部屋を設けたり、お子さんやお母さん層を多くみていく場合は、キッズルームを作ったりなども必要になってくるかもしれません。そうした場合、その物件の広さで十分でしょうか?

後々「もっと広い方が良かった」と後悔しても、一度開業してしまうと移転開業するのはほぼ不可能です。移転しないとしても、「リハビリスペースが確保できないので、スタッフルームの一部をつぶして、リハビリ室を大きくする必要がある」など大掛かりなやり直しが必要となり、お金も時間もかかってしまいます。

本来は「どういうクリニックにしたいのか」=コンセプトを明確にしたうえで、それにふさわしい立地と物件を借り、設備を整えるのが理想なのです。そうでないと、どのような医療機器を入れるべきか、内装はどうするかなど全てにおいて判断の軸がなく、無駄な投資が増えてしまうのです。

地域の患者様へのアピール項目になる

コンセプトは、外部に向けて医院の姿勢を明確に示したものになります。患者様の心に響く表現を使えばより強く自院をアピールすることができますし、他院と違って自院を選んでもらう理由になります。

コンセプト設計は「どのような患者様に来てもらいたいのか?」を明確にする作業でもあります。対象とする患者様を絞り込むのは、それ以外の患者様を「捨てる」ことになり、先生は不安に思うかもしれません。しかし、「誰にとってもよい」というのは「誰からも求められない」ことと同義です。広告などにおいて、すべてを対象にしたあいまいな広告は、誰の心にも響かないありきたりのチラシを作るだけで、どの患者様を確保することはできないのです。

広告だけでなく、診療時間や休診日を決める上でも、対象にしたい患者がサラリーマンなのか地域住民なのかで、患者が通いやすい診療時間が変わってきます。コンセプトが不明確なままだと、診療時間を周囲の医療機関に合わせて「なんとなく」決めてしまい、結果的に、新規開業しても自院の特徴が伝わらず、来てもらえない、という事態になってしまうのです。

開業後も常に立ち返る原点となる

クリニックの開業後、想定外のトラブルや経営課題に悩まされることはどうしてもあります。例えば従業員が就業時間の変更を希望してきたとします。コンセプトが不明確だと、従業員の希望に応じて安易に診療時間を変更したところ、これまで来院されていた患者が来なくなった、などの事態が起こりえます。コンセプトが明確であれば、「クリニック経営において何を大切にするのか」という原点に常に立ち返ることができ、自信を持って判断を行うことができるのです。

スタッフにクリニックの方向を示す指針となる

クリニックで雇用するスタッフは、経験やスキルだけでなく、勤務態度もまちまちです。そのスタッフが全員同じ方向を向いて進む指針となるのは、クリニックの理念であり、コンセプトなのです。

スタッフ採用においても、コンセプトが曖昧な場合、自院が望むスタッフ像を描くことができず、例えば経験だけを見てスタッフを採用してしまいます。のちにそのスタッフの勤務態度に問題があったとしても簡単に解雇できません。また、採用してもスタッフがすぐにやめてしまうなど、多くのトラブルを生んでしまいます。

医院開業時のコンセプト設計の具体例

では具体的にどのようにコンセプトを設計していけばよいのでしょうか? コンセプト設計で大事なのは、クリニックにおける目標やビジョンを決める前に、自身の経歴や専門性、スキルや強み・弱みは何かについて、具体的に書き出し、認識してみることです。ここでアプローチ例を一つご紹介したいと思います。

<コンセプトを設計し開業した先生の例>

1.基礎情報

日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会専門医

整形外科、救急科の経験を経て、リハビリテーション病院に医長で勤務

2.自身の強み
  1. 整形外科、リハビリテーションの専門医であり、大学病院や基幹病院で整形外科、リハビリテーションの専門医として診療に従事してきた経験
  2. 病院でのリハビリスタッフとの関係が密で、開院時には優秀なスタッフを連れてくることができる。
  3. 開業予定地域に、自身が働いていた病院があり、連携が取れる。
  4. 開業予定地域には、現在のところ退院後のリハビリテーションの受け入れ先がない
3.ターゲットとする患者層
  1. 病院で、リハビリが不十分なまま退院してしまい「リハビリをしたいがする場所がない」と悩んでいる患者様やそのご家族
  2. 地域の整形外科疾患を持った方
  3. リハビリは必要だが、通院が難しい患者様
4.コンセプト
  • 地域で一番身近で、リハビリテーションに力を入れた整形外科
  • 高齢者はもちろん、交通事故による怪我やスポーツ障害などで疾患を持った方などに対応できるクリニック。特に膝関節・股関節治療を専門とする
  • 説明と理解の上に立った診療を目指し、地域の整形外科疾患を持った方、特に高齢者にとって、気軽に通え、相談しやすい雰囲気を持った開かれたクリニック
5.コンセプトを軸にした開業の進め方
  • 立地は、リハビリを必要とする患者さんが来院しやすい1階に
  • 先生がもともと働いていたリハビリ病院の患者様が来院できる範囲に開業
  • 車で来院しやすいよう、近くの駐車場と提携できる場所
  • リハビリスペースを広く確保できるよう最低でも60坪以上の広さ
  • 1日の目標患者数が200人のため、診察室は2つ用意
  • リハビリ室は物療スペースと運動器スペースを分ける
  • 運動器リハビリを中心に考えていたためマッサージをする予定はなかったが、患者ニーズによってはする可能性もあるため、別途マッサージ室を完備
  • スタッフは理学療法士、作業療法士等専門の資格者を採用
  • スタッフが働きやすいよう、テナントの2階にスタッフルームを借りる
  • リハビリテーション時の患者様とスタッフのコミュニケーションが非常に重要なため、採用基準は経験や知識以上にコミュニケーション力を重視する

まとめ

いかがでしたか?コンセプト設計というとどうしても身構えてしまいがちですが、これなくして開業はありえません。大切なのは「患者様のニーズをベースに開業する」という視点です。自分のやりたいことだけをベースに考えず、患者様に求められる医療をするという発想が大切です。

実際のコンセプト設計では、大まかなコンセプトを頭に描きつつ、開業エリアが決まった上で「その地域にどのような医療を提供するのか」と、診療券調査の結果などを複合的に絡めて設計していくことが多いです。「このコンセプトで大丈夫かどうか不安になる」という先生方は、ぜひ早めに、コンサルタントなどにアドバイスを求めると良いでしょう。

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