2017.01.23

開業資金の借り入れをスムーズに行うには?

借入の方法

開業資金を銀行などの金融機関から借り入れる際には審査に通る必要があります。借り入れを受けやすくするには説得力のある開業計画書を作成することが必要不可欠です。

医師としての実績・キャリアや、目指している診療所の姿、開業に向けてのこれまでの準備を振り返り、開業に対する思いを明文化しましょう。

クリニック開業避けては通れない「借り入れ」とは?

借り入れとは、開業にあたって必要な資金を、銀行などから融資してもらうことを言います。手元の資金から開業資金を出せるなら別ですが、クリニック開業にあたって、平均3,000万円~6,000万円ほどの資金が必要ですから、開業資金の借り入れを行うことが一般的でしょう。 

借り入れ先としては、銀行、消費者金融、事業者金融などが考えられます。金融機関側の立場からすれば、当然きちんと返済できる相手にしか融資したくありませんから、貸す相手の返済能力や事業計画などを審査することになります。その審査に通れば、開業資金の融資が受けられるという流れです。借り入れ先は、資金面でクリニック経営のパートナーとなりますから、自分自身に合った借り入れ先を選ぶことが重要です。

金融機関は融資に積極姿勢、しかし審査は厳正化

近年、民間銀行をはじめとする金融機関は、融資において積極姿勢に転じており、クリニック開業向けの融資については、銀行や支店によってばらつきがあるものの、積極的である場合が多いようです。それに伴い、銀行の多くは、本部の中に医療業界を担当するセクションを設けて、医療を取り巻く経営環境や行政動向の分析、地域特性の把握、診療所経営の研究などを行っています。つまり、融資について金融機関は積極姿勢をみせてはいるものの、審査は従来よりも詳細かつ厳正になっているのです。

借り入れ先の選び方

交渉がスムーズに運びやすく、借り入れ先としておすすめしたいのは、従来からの取引のある金融機関です。付き合いのある支店が開業予定地から離れている場合は、これまでの視点に相談して、開業予定地に近い支店を紹介してもらうことができます。 これまで取引がなくても、開業予定地の近くにある銀行も候補としてよいでしょう。この場合は、できれば紹介者を経由して接触します。開業準備でお世話になった不動産業者などに、紹介者になってもらえないか相談してみましょう。  

では、これまで金融機関と取引がなく、適切な紹介者がいない場合はどうすればいいでしょうか。かつては、金融機関側も紹介のない新規融資申し込みについては極めて慎重に対応する傾向がありましたが、最近ではそれほどでもなくなっているので、さほど心配することはありません。健全な案件には積極的に融資をしたいというのが金融機関の本音ですから、開業計画書などの資料作成に注力し、無理のない事業計画であることを示せば、前向きな姿勢を示してくれるでしょう。

借り入れの手順

借り入れに関して、金融機関との交渉の第一歩は、支店・支社への電話です。「新規に診療所を開設したいので、資金を借りたい」と告げれば、融資課長などの担当者につないでくれます。そこで、「融資の相談をしたい」と伝えて、訪問の約束を取りつけましょう。

ただし、支店によっては、は個人向けの預金やローンのみ扱っており、事業に対する融資は行っていない場合もあります。その際には、開業予定地を告げてその近隣の支店・支社を紹介してもらいましょう。開業予定地から遠い支店しかない場合は、別の借り入れ先を探すことも考えて交渉を進めましょう。

借り入れを受けやすくする開業計画書のポイント

融資を申し込む際には、事業計画や資金計画を文書にまとめて、開業計画書として提出する必要があります。かつては、計画が未確定であっても、金融機関の担当者と相談しながら具体化させていくということができましたが、現在ではそのような対応はあまり望めません。

金融機関を納得させる、整合性の取れた開業計画書の作成を目指しましょう。 説得力のある開業計画書にするには、以下の3つのポイントが重要です。

  1. きちんとした市場調査に基づく開業計画であるか?
  2. 医療制度の変革や高齢化など、今後の時代の変化を踏まえた計画になっているか?
  3. 収支計画に無理はないか?

では、具体的に用意する必要のある資料についてみていきましょう。

開業計画書に織り込むべき資料

経営基本計画書

開業の目的や理念、基本方針などのほか、診療科目、診療の内容、医療連携、診療方針、運営方針、診療体制などをまとめたもので、いわば、開業計画の骨子と概略を示す、最も重要な資料です。事業計画の他の部分において迷うことがあれば、この計画書に立ち戻ることになる、すべての基本となる書類です。

開業の目的と聞くと、戸惑う先生が多いですが、経営基本計画書を作成する際には必ず必要な内容です。「そんなこと、考えたこともない」と思われるかもしれませんが、医師としての実績・キャリアや、目指している診療所の姿、開業に向けてのこれまでの準備を振り返れば、おのずとご自身の開業に対する思いは明確になるでしょう。これまでの実績・キャリアと目指すクリニック像に齟齬があれば、当然、借り入れ先の心証は悪くなります。経営基本計画書の作成を機に、ぜひ明文化しておきましょう。

開業目的については、経営計画書、もしくは別紙に、開業への熱意を含めて詳しく説明しましょう。それまでの勤務を辞めて独立・開業することは容易ではなく、予期せぬ出来事に遭遇する可能性もあります。借り入れ側は、その際に事業を継続する能力や強い意志があるかどうかを見ています。


設備計画書

経営基本計画書に沿った医療を行うために、どのような設備が必要で、どのような資金で調達するのかなどを記す書類です。金融機関はこの資料をチェックする時に、過剰投資はないか、資金調達は本当に可能かなどをチェックします。借入期間が短すぎる、借り入れ先に不審企業が含まれるなどの場合は、金融機関の不信を招く可能性があります。


患者見込み計画書

開業後の患者数推移の見込みを示す資料です。診療圏調査などにより、明確に患者数の算出の根拠を出すことが必要です。また、患者数とともに、患者1人当たりの診療単価設定の根拠を示すことも求められます。自院が目指す診療の特徴を踏まえて、説明の準備をしておくとよいでしょう。

患者数の見込みについては、診療圏内の人口構成と受診率を基に算出するのが一般的です。さらに、地域の医療供給体制や地理的条件といった地域の生の情報を加味した上で説明を行うと説得力が増します。通常の診療圏調査では対応できない、専門的な医療を行うクリニックを開業する場合は、その医療の特色を示し、提出した計画の基となる考え方を丁寧に説明するとよいでしょう。


収支計画書

患者見込み計画書による収入予測に、人件費や材料費などの経費、減価償却と借入返済額を加味して、診療所としての損益がどのような状態で推移するのかを示した資料です。この資料をきちんと作りこむことによって、クリニックに配置する設備や働く人材などが具体的に見えてきます。現実的に無理なくまとめることができれば、金融機関の説得材料になるでしょう。


担保明細

借り入れについて、連帯保証人がいれればそのあらましを記します。連帯保証人が配偶者・親以外であれば、この項目に限り、詳細を提示しなくともかまいません。不動産担保であれば、登記簿謄本を用意しましょう。 提出資料の中の数字は、現実的に、厳密にはじき出せないものも多くあります。

例えば患者数見込みならば、「1日当たり最小で45人、最大で65人」といった具合です。資料作成に当たっても、ある程度の幅(余裕率)を設定し、複数の種類の計画書を用意しておくとよいでしょう。「現実的な見込みで計算すればこの計画書Aの通り。ただし、仮に患者数がマイナス5%となっても計画書Bのように収支に問題はない」などのように説明すれば、慎重を期した計画を立てており、計画が下ぶれしても支障がない、と強調することができ、説得材料としても十分です。

資料作成の注意点

借り入れに際し、膨大な開業計画書を作成する必要があることをこれまで述べてきました。では、これらの資料は、開業する先生がすべて作成しなければならないのでしょうか? 開業は生涯の一大事。開業計画書以外にもやることは山積みですし、客観的な視点から助言してくれるパートナーも必要です。

すべてを自分で作成しようとは考えず、コンサルタントなどの専門家を上手に活用することをお勧めします。しかし、すべてをコンサルタント任せにするのは禁物。自分の考えをはっきりさせた上で、専門家との話し合いを通じて開業方針を整理・修正し、それを文書化してもらいましょう。

融資審査のポイント

開業計画書の内容以外に、金融機関がチェックするポイントは、以下の通りです。

経営能力

クリニックの経営者として、経営についての関心や基礎的な知識、人間的な側面に問題がないかをチェックされます。ただし、これまで勤務医だった先生が、この時点で、経営者として完全であることはあり得ませんので、今後、どのような形で研さんを積んでいくかをはっきりと答えられれば大きな問題はありません。また、税務知識については、実務を税理士に任せることになるため、最低限の基本的な知識だけ身につけておきましょう。

取引状況

申し込み先とのこれまでの取引実績や、今後の取引見込みをチェックされます。それまでに取引があればその実績が考慮されますし、その内容についても、普通預金よりは定期預金、預金よりはローン取引が重視されます。ローン取引があれば、返済が順調であったかどうかも重要です。しかし、過去に取引がないことが、融資を引き出す際の大きな障害になることはありません。また、融資後の大口預金の取引を前提として融資を決定するようなこともほぼありません。

 

参考:勉強会セミナー

開業を成功させる一番のポイントは、事業主となる先生が経営者として成長することにあります。経営者としての考え方、視点、判断の方法を学ぶための勉強会です。

>クリニック開業基礎講座

>クリニック継承基礎講座

>スタッフ採用・育成基礎講座

>広告・集患基礎講座

>開業医の為の将来設計講座

まとめ

借り入れを行う際には、事業がうまくいくかどうかという事前の調査にもとづいた計画が必要不可欠。それに加えて、先生自身の医療に対する考え方と、経営者としての覚悟をきちんと借り入れ先に伝えましょう。開業計画書がプロの手によって完璧に作成されていても、その計画を実行していく院長先生自身がそれを理解できていなければ、金融機関側に不信感を与えるばかりか、開業後の経営も不安です。
開業計画書の作成は煩雑な作業ではありますが、先生にとっては、開業の動機や実現したい医療について真剣に考える良い機会です。うまく活用して、理想のクリニックの設計図を完成させましょう。

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