2017.03.07

良いスタッフを採用するには?~募集から面接、採用決定までの流れ~

クリニックを開業し、経営していくにあたり一緒に働くスタッフの採用は非常に重要なポイントとなります。
しかし、普通院長はスタッフの採用は初めての経験であり、採用の考え方やポイントなどがわからず進めてしまっているケースも少なくありません。今回はスタッフの募集から書類選考、面接まで、採用活動を通してのポイントをご紹介いたします。

クリニック経営における、募集から採用確定までの流れ

スタッフ採用における、一般的なスケジュールは以下のようなものです。

開業の2〜3ヶ月ほど前から求人広告の内容の検討などを開始し、1か月半ほど前には求人広告を掲載しておきたいところです。看護師など採用が難しい有資格者のスタッフについては、半年ほど前から検討し始めても遅くはありません。

開業準備中は他にもたくさんやるべきことがありますが、採用計画を先延ばしにするほど、優秀な人材が集まらず、焦って採用条件を甘くしてしまうなど、後々うまくいかないことがやってきます。無駄なく行えるよう、余裕を持ってスケジュールを組み、流れを把握しておきましょう。

採用ビジョンを明確に持つことが重要

クリニックスタッフの採用計画を作成するにあたり検討すべき項目は、職種、求める資質、人数、給与、常勤かパートかなどが挙げられるでしょう。いずれにおいても最も大切なことは、理想のクリニックの姿を明確にイメージし、それを具体的な言葉や数字、採用ビジョンに落とし込むことです。

例えば受付の応対レベルが高いクリニックを目指すなら、受付スタッフには「感じの良い受け答えができる」など資質面を必須条件とし、余裕を持った人数配置や接遇面の優遇も検討するなど、採用ビジョンが明らかになっていきます。 どの職種に何人必要で、それにはどのような資質が求められるのか。どのようなシフトで回すのか。経験者と未経験者のバランスをどうするのか。男女比はどうするのか、雇用形態はどうするのか。これらについて、理想のクリニック像をもとに、採用ビジョンを一つひとつ明確にしていきましょう。

どういった人材が欲しいのかも決まっていない中途半端な考えで採用を行うと、順調な開業をストップする要因にもなります。 また、これから開業する先生方の場合、スタッフの採用に関する経験不足から、「採用ビジョンは決めたつもりだったが、思ったように運ばなかった」ということも多いのが実情です。

下記の事例は、そのような採用ミス事例です。こうならないようにも、開業後の医院経営支援の実績があるコンサルタントにアドバイスを求めると、より確実だと思います。

経験者採用の罠

60人もの応募があった医院は、採用条件として診療報酬の請求業務や保険点数に精通していることを重視していました。レセプトコンピューターを導入する予定だったほか、院長自身が保険点数についての知識があまりなかったので、医療機関での勤務経験のある人を第一に採用しようと考えたのです。

このため、書類選考や面接では、経験者を優先して選びました。 面接をする中で、保険点数などの知識に非常に長けている応募者がいました。少し性格はきつそうでしたが、事務職のリーダーに据えることを決定しました。 スタッフ採用もひと通り決まり、オリエンテーションを実施して開業3週間前から実践的な研修に入りました。

リーダーに据えたスタッフは、自分の経験則から、他のスタッフに厳しく接するスタイルをとりました。職員一人ひとりに強制的に業務責任を与え、うまくできなければ厳しく叱責したのです。 業務をスムーズに進めるのが難しい開業当初は特に、全スタッフで相談し合いながら分担などを決めたり、業務を進めていくことが大切となります。その意味では、このやり方はスタッフ間に摩擦を生じさせる可能性が高いといえました。

そこで院長は、「みんなと相談しながら業務を進めていってほしい」と 要望しましたが、「私はリーダーとして任命されたのでここまで頑張ってきたのに、納得いきません」と反抗するばかり。ついには、開業直前に退職してしまいました。 スタッフ募集の際は、確かにそれまでの経験や身に付けている知識量などが採用ポイントの一つとなりますが、それ以上に人柄やコミュニケーション能力が重要になります。大病院と違い小さなクリニック経営では、チームワークやビジョンの共有ということが非常に大切だからです。

応募者を信用しすぎない

6月に開業を控えた医師は、オープニングスタッフの確保のために、3月に求人広告を掲載。4月初めに書類選考、4月中旬に採用面接を行うスケジュールを立て、準備を着々と進めました。受付の医療事務スタッフについては、経験豊富で人当たりの良いBさんのポイントが高く、面接翌日、すぐに採用内定の連絡を入れました。医療事務の資格を保有し、クリニックでの勤務経験もあり、レセプト総括も行ったことがあるという即戦力の人材です。電話での連絡でしたが、「ぜひよろしくお願いします」との回答があったため、A医師は「何とかこれで受付は安心して任せられるな」と思いました。  

5月に入って内装工事も終わり、開業まで約3週間となったころ、スタッフのトレーニングを開始するため、採用内定したスタッフに招集をかけました。すると、Bさんから、「やはり内定を辞退したい」と言われてしまったのです。 優秀で受付を任せられると安心しきっていたA医師は驚きを隠せません。開業直前に、受付医療事務がゼロの状態になってしまったのです。どうやらBさんは、A医師から内定をもらった後も就職活動を続けており、より良い条件を出してくれたCクリニックで勤めることに決めたようで、気持ちを翻すことはできませんでした。

口頭のみで内定を承諾していた場合には、こういった事が起こる場合があります。 内定の承諾を行う際には、内定承諾書の提出を求め、本当に働く気持ちがあるのかどうかをしっかりと確認しましょう。

採用のし過ぎに注意

一般にオープニングスタッフの求人は応募が集まりやすいとされています。 勤務シフトなどをよく考えず、応募のあった中から良い人材を手当たり次第採用すると、スタッフが時間を持て余す状況になります。

実際に開業したA医院。開院当初は皆不慣れなうえに新規の患者さんばかりだったので、対応に時間も人手もかかっていましたが、再来の患者さんが増えてくると、開業時の人員体制は人員配置が厚すぎてスタッフが時間を持て余すようになりました。 シフトの見直しを行うと、「シフトを減らされるとお給料が少なすぎてやっていけない」といった声が多くあがり、医師に対する不満が爆発しました。

ここで医師は、勤務態度が悪かったことを理由に何人かのスタッフを解雇することを決めましたが、当のスタッフたちから見れば、納得できるはずもありません。悪評をバラまき、患者数の伸びにまで影響しました。 ここまで極端でなくとも、開業時にスタッフを採用しすぎて後に問題になる事例は時々見られます。開業時には、クリニック運営に必要な職種別の人員数を明確にすることが大前提です。その上で、スタッフの希望シフト数(最低限働きたいコマ数、最大限働けるコマ数、希望労働時間帯、曜日)を書面で確認し、お互いの考えにずれがないかを確認する必要があります。

スタッフ選考のポイント

書類選考のポイント

書類選定では、履歴書の記載内容から人物像を想像し適性を判断します。例えば、誤字脱字がある、文字が雑に書かれている、写真が貼られていない、などの場合は、仕事が雑かもしれない、という推定が可能です。

職歴欄を見れば、応募者に医療機関の勤務経験があるかどうかが分かります。短期間で転職を繰り返しているタイプは、本人の考え方に問題がある可能性も否定できません。このほか、通勤距離も候補者を絞り込む上での判断材料になるでしょう。

面接時のポイント

短時間の面接で効率的に必要事項を聞き出すためには、最低限質問したいと考えている「事前質問シート」を作っておくとよいでしょう。内容としては、例えば

●仕事をしていて何に一番やりがいを感じますか?
●前回の職場で不満があったこと、もしくはよかったと思う点を教えて下さい。
●当院で働く上で期待することは何か教えて下さい。
●仕事をするうえでもっとも大切にしていることを教えて下さい。

などが考えられます。 募集広告の出し方にもよりますが、医療事務スタッフは10人を超える人数から選考することもめずらしくありません。そこで、いきなり面接に入る前に質問シートに記入してもらいます。そうすることで、応募者自身も頭が整理されるため面接でも効果的に応募者の考えを引き出すことができます。

また後で応募者を比較検討する際に役立ちます。

面接ではまず、第一印象が重要になる

面接には普通、普段の自分以上に良く見せようと意識しているものですが、それでも遅刻してきたり、挨拶ができなかったり、目を見て話せなかったりだとすれば仕事でも同じことになる可能性が高いと考えてよいと思います。

また先生が見た瞬間に感じた第一印象が、患者様がクリニックに入ってきて受付に行った際に感じる第一印象と同じであるといえます。もしその印象が当院にふさわしくないと感じたのであれば、採用は見送った方が賢明でしょう。 クリニックのスタッフになるのに相応しい身だしなみ、マナーが備わっているかどうかもチェックしましょう。

メイクが派手、爪を伸ばしている、強い香水をつけているといった応募者は、医療機関に勤務しようとする姿勢に欠けると考えられ、大きな減点要素になるといえます。

実践的な質問で仕事に対する姿勢を見る

応募者への質問では、仕事に対する意識や姿勢の確認に重点を置きたいものです。

例えば、「患者は、クリニックの受付スタッフに何を求めていると思うか」「前職で一番やりがいを感じたのはどのようなときか」など、仕事の現場に則した具体的な質問をすれば、 応募者の考え方がつかめます。

また、過去に転職経験があれば、必ず転職の理由や前職で不満に感じたことなど聞くのも人物像の把握に役立ちます。 ここで明確な理由がない、誤魔化す、前職の批判をするなどの対応が見られれば、採用を見送る方がよいと思います。

その人の考え方の習慣となっている可能性が高く、採用後も同じような理由で辞める可能性が高いからです。 これらの質問に対する受け答えを見ながら、院長が職員に求める「ホスピタリティー」「とっさの対応力」「協調性」「向上心」などの能力が備わっているかを確認していきます。

また面接時に院長の側から、経営理念、診療方針、望ましい人材像、求めるスキル、院内のルールなどを説明することも重要です。採用後のトラブル防止につながるうえ、院長の話に応募者が共感しながら聞いているか観察すれば、自院に合う人材かどうかを判断できます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
クリニックのスタッフは時として医師よりも患者さんと触れ合う時間が長くなります。
スタッフは1人1人が院の顔とも言える存在です。
「あの看護師さんがいるからあの医院に行こう」「受付のスタッフさんが不愛想だったから違う医院を探そう」。こういった考えの患者さんも多くいます。
良いスタッフを採用し、自分の診察に合った医療サービスの提供が行えるように心がけましょう。

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