2018.07.26

多くの医師が勘違いしている?開業資金借り入れの落とし穴

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クリニック開業に必要な資金は診療科目によって違いはあるものの、大体5000万円から1億円必要※と言われています。
そのためほとんどの先生が金融機関から借入をすることになります。しかし、その際多くの先生が陥る考え方の「落とし穴」があります。今回はその落とし穴について解説していきます。

クリニック開業に必要な資金は診療科目によって違いはあるものの、大体5000万円から1億円必要※と言われています。

※診療科目ごとの開業資金やその内訳など詳しくは下記の記事にまとめています。

>【診療科目別】クリニックを開業するための開業資金はいくら必要?まとめ

そのためほとんどの先生が金融機関から借入をすることになります。しかし、その際多くの先生が陥る考え方の「落とし穴」があります。今回はその落とし穴について解説していきます。

1、「借り入れ金額はできるだけ少なく抑えよう」は要注意!?

一般的な感覚では、借金に良いイメージはないでしょう。

そのため「できるだけ借り入れをしたくない」「できるだけ借り入れを早く返したい」と考えがちですが、この考え方には注意が必要です。なぜなら、個人の「借金」と事業上の「借り入れ」は、そもそもの目的や捉え方が全く異なるからです。

2、個人の借金と事業借り入れの違いとは?

それでは、個人の借入と事業の借り入れでは何が違うのでしょうか。 事業借り入れの目的や経営的な側面から見た考え方をご説明します。

■事業借り入れの目的

事業借り入れの目的は個人の借り入れとは違い、事業を拡大することにあります。

つまり「足りないものを人に借りて補填する」というよりも、「借入金を事業投下することで、いかに売り上げや利益を増やすか」という考え方が必要です。

そのため負債としてのマイナスイメージを持つ必要はありません。それよりも、いかに売り上げや利益を増やす元手に出来るかと考えた方が良いといえます。

 

■借り入れを無理にセーブしてしまうとどうなるのか?

借入金を負債と捉え、過度にセーブしてしまうことで売り上げや利益を生むための活用ができなくなってしまうケースもあります。代表的な2つのケースについて考えてみましょう。

1「できるだけ借金はしたくない」開業資金を少なく借りた場合

クリニック経営では、無理をして借入額を最低限におさえた場合、肝心の事業資金の不足が経営難を引き起こす場合があります。詳しくは後ほど説明しますが、クリニックの売り上げ収入の8〜9割が手元に入ってくるのは2ヶ月後です。そうしたサイクルが正常に回り出し、売上や利益がコンスタントに出るようになる前にクリニックの運営継続が困難になってしまうと、借入金がすべて無駄になってしまいます。

2「開業ローンを早期返済したい」返済期間を短くした場合

経営上の判断ではなく、単純に借金に対するマイナスイメージから、借り入れ金を早く返したいと考えて、返済期間を短くしてしまうのも注意が必要です。

返済期間が短いと月々の返済額が高額になり、クリニック経営だけでなく院長先生の生活まで圧迫してしまいます。そのため、開業ローンは可能な限り「ゆとり」を持った返済をすることが大切です。

とはいえ、人からお金を「借りている状態」でゆとりを持つということにどうしても違和感を感じる方もまだいるのではないでしょうか。 ではもう一つ現実的な経営のリスクヘッジという側面から「借り入れ」について考えてみましょう。

■経営のリスクヘッジとしての「借り入れ」

あまり考えたいことではありませんが、考えておかなければならない第3のケースについて考えてみましょう。

経営が苦しくなった場合

もしも、医院経営が軌道にのるのに想定したよりも時間がかかり、一時的に経営が苦しくなったとしたらどうでしょうか。その場合、経営が軌道にのるまでの期間を持ちこたえるために、追加でお金を調達する必要がでてきます。しかし、経営が苦しくなった状態では、金融機関は貸し倒れを避けるため、融資をしようとしません。金融機関からの融資を受けるためには、返済に不安のない状態でなければいけません。そのため、資金調達は経営に余裕があるうちに行う必要があります。

そして、非常に重要な点がもう一つあります。

「資金調達が切実になってしまうと自分自身が経営者として冷静でいられなくなる」ということです。

どれだけ優秀な経営者であっても、資金繰りが苦しいと精神的に不安定になり、冷静な経営判断ができなくなります。そのためよく陥る典型的な経営の悪循環をご紹介します。

<本来の売り上げ上昇サイクル>

「広告・認知活動など患者数を増やすために投資」

⇒「新患が増える」

⇒「利益が上がる」

<資金繰りが厳しくなりはまり込んでしまう負のサイクル>

「できるだけお金は使わないようにしよう」

⇒「広告・認知活動など患者数を増やすために投資をしない」

⇒「患者数は横ばい又は減少」

⇒「状況は改善されにくい」

⇒「さらに資金繰りは厳しくなる」

 ⇒「さらに節約」

こうして問題は長期化し、状況は悪化していきます。

それではどのようにしてこうしたリスクを回避すれば良いのでしょうか。

 

3、リスクを下げるためには、運転資金に余裕を設けることが大切

■運転資金とは?

運転資金とは、簡単に言えば、開業後、赤字の間をカバーする資金です。クリニック経営の場合、保険診療報酬が収入の中心になります。しかし窓口収入(売上の1~2割程度)はその場ですぐ手元に入りますが、保険収入(売上の8~9割)が入ってくるのは、その2カ月後になります。そのため、どうしても開業して最初の2カ月間は入ってくる収入以上に出ていくお金(家賃や人件費など)の方が多くなります。

一般的に「確保すべき運転資金は診療報酬額の概ね2~3ヶ月分」などとも言われますが、明確な根拠があるわけではありません。開業直後から事業計画を上回る業績を達成し黒字化するクリニックもあれば、先ほど述べたようにスタートダッシュが不調で、開業後の患者数が1日数人、1年以上経ってようやく単月黒字を達成する例もあるからです。

そのため、運転資金とは「損益分岐点に達し、キャッシュフローが安定するまでの期間をカバーする費用」と考え、入念なシミュレーションに基づく損益計算から算出するのが適切です。

 

開業準備の予算組みももちろん慎重な計算が必要ですが、むしろ難しいのは開業後の「運転資金」額の設定です。

■必要な運転資金の考え方とは?

下記は、1日平均患者数を初月から20人として、計算した場合の簡易シミュレーションです。

こちらをご覧いただけば、診療報酬額だけを基準に機械的に運転資金を算出するのはあまりにもリスクが高い事がお分かりになるかと思います。シミュレーションが甘いと数カ月後には資金繰りが厳しくなり、崖っぷちに追い込まれる危険性もあります。

先ほども述べたように、一般的に金融機関は事業計画の甘さによる運転資金の追加融資は嫌がる傾向があります。

まとめ

個人で借りる借り入れと事業で借りる借り入れの違いを理解して、主観的な心情で判断するのではなく、客観的なシミュレーション結果から、資金には余裕を設けましょう。開業医として経営者の考え方を習得していく上で、重要なのは短期的なお金の流れだけを見るのではなく、長期的な時間軸でお金の動きを見ていく能力です。

番外編:では、リスクを下げるだけでなく早期に経営を軌道に乗せていくために必要なこととは?

まとめで述べたように主観的な心情で借り入れを避けるのではなく、客観的なシミュレーション結果から、余裕を持った資金を借り入れ、運転資金には余裕を設けることの重要性をお話ししてきました。

しかし、それらはどちらかというと「守り」の施策です。これらだけで経営を軌道に乗せていくことはできません。早期に経営を軌道に乗せていくために必要なのは、売上を上げていく仕組み作りです。

    1. 1日に何人の患者さんがきていれば、黒字化するのか「目標設定」をすること
    2. 目標患者数を達成するために早い時期から適切な「集患活動」をすること
    3. 初めて来た患者さんが、既存顧客となりリピートしてくれる「対応」をすること
    4. リピートと口コミが広がる「仕組み作り」をすること

まずは、①と②を適切に行うことが大切です。

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■参考:勉強会セミナー

当社では、開業医を志す医師を対象とした勉強会セミナーを行っています。

開業を成功させる一番のポイントは、「いい立地」でも「いいコンサルタント」に依頼することでもなく、事業主となる先生が経営者として成長することにあります。

経営者としての考え方、視点、判断の方法を学び、経営者視点で判断を下していけるようになるための勉強会です。

参考:勉強会セミナー

開業を成功させる一番のポイントは、事業主となる先生が経営者として成長することにあります。経営者としての考え方、視点、判断の方法を学ぶための勉強会です。

>クリニック開業基礎講座

>クリニック継承基礎講座

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まとめ

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