2017.05.06

【診療科別】クリニックを開業するための初期投資はいくら必要?

初期投資

クリニックの開業資金や、開業後の診療報酬は、クリニックのコンセプトによって大きく変わります。
また開業の条件によって、開業資金には違いが出ます。例えば、戸建クリニックを開業するのか、ビル診療にするのか?さらには最低限の機器のみで開業するのか、売りとなる機器を導入するのか、などでも大きく変わってきます。

この記事では、クリニックの診療科別でおおよそどの程度開業資金が必要になってくるかを解説していきたいと思います。

開業時の初期投資とは

クリニックを開業する際には、開業資金として多額の初期投資が必要になります。院長先生の多くは、開業ローンを組み、長期間に渡って支払い計画を立てる方が多いようです。開業資金としてかかる費用の主な項目は、下記の通りです。

  • 土地・建物
  • 医療機器、什器
  • 広告宣伝費(ホームページや開院時のチラシ印刷代等)
  • 消耗品費(一つ30万円以下の机やイス、テレビ等)
  • 医師会入会費
  • 運転資金(売り上げの少ない月の、人件費や家賃の支払いに備えるための資金)

科目ごとの初期投資と開業時のポイント

内科

内科は、競合が多い中でいかに自院の専門性や特徴を打ち出すかが重要です。日本消化器病学会専門医、糖尿病学会専門医などの専門医資格を持っていることや、内視鏡が得意なことなど、先生の強みを患者様に知ってもらうことが大切です。どんな分野をどこまで診療されるのか、逆に診療しないのはどの分野か、開業前にコンセプトを決めるとよいでしょう。

開業資金

土地/建物:約2,500万~
設備:約1,800万~3,500万円
(電子カルテ、レセコン、超音波診断装置、心電計、X線撮影装置、内視鏡 など)


整形外科

整形外科は、リハビリテーションを実施することが多いため、資格を持ったスタッフを十分な人数そろえる必要があります。

医療事務・看護師に加え、放射線技師・理学療法士・リハビリ助手などの職種の採用を行い、総人数も多くなるため、経費に占める人件費の率は他の診療科より高くなります。またリハビリルームを設置したり、X線室のシールド工事を行ったりするので、整形外科の適正な面積は60~100坪だと言われています。 リハビリに訪れる一日の患者数は他の科目に比べて多いですが、クリニックの規模は大きく、一日当たりの経費や開業資金は高くなることが多いです。

他のクリニックと差別化するためには、例えば充分な数の理学療法士を配置してリハビリテーション重視のクリニックを目指す、学校の多い地域であれば、スポーツによる怪我へのケアを重視している旨を謳うなどの方法が考えられます。

開業資金

土地/建物:約3,000万~
設備:約2000万~
(電子カルテ、レセコン、X線撮影装置、超音波検査装置、骨密度測定装置、低周波治療器、牽引器、平行棒など)


眼科

開業前に、白内障手術などの手術を行うか否かをきちんと決める必要があります。なぜなら、白内障の手術用機器を揃えるかどうかで、開業経費が2,000~3,000万円変わってくるからです。また、クリニックの適正面積も、レーザー治療レベルの場合は30~40坪前後、白内障などの手術を行う場合は70~100坪前後という違いがあります。

眼科はほかのクリニックに比べてバリアフリーの必要性が高くなります。眼科を訪れる方は眼が不自由な方や高齢者、車椅子の方が多く、検査を行う際に散瞳薬を使用する患者様もおられます。院内の設計を行う際には、車椅子の方や杖をついた方、視力の弱い方、色覚異常の方が自由に移動できるよう、動線や標示を考えましょう。

開業資金

土地/建物:約3,000万~
設備:約2,000万~4,500万円
(電子カルテ、レセコン、スリットランプ、オートレフケラトメータ、自動視野計、眼底カメラ)


皮膚科

皮膚科には、小さなお子様から年配の方まで男女問わず、他の診療科目に比べて幅広い患者様が来院されます。開院してしばらくは来院される患者様の層を観察し、戦略を立てた上で診療を行うのがよいでしょう。

例えば、幼児の受診が多い地域ならば、幼児を中心に診療を行い、付き添いの保護者の方に自費診療や化粧品を勧めていくと、その保護者の方から評判が回り、ご家族やご近所の方が来院され、クリニックの集患につながることがあります。  

開業時点では、電子カルテ・顕微鏡・オートクレーブがあれば、最低限の診療が可能です。美容系機器の導入費用は1,000万円以上と、開業時点ではかなり高い買い物になるので、開業後にクリニックのコンセプトと地域の患者様のニーズを合わせて考慮し、導入を決定するのがよいでしょう。

開業資金

土地/建物:約1,200万~
設備:約500万円~
(ただし各種レーザー機器を導入しない場合) (電子カルテ、レセコン、顕微鏡、無影灯 など)


精神科・心療内科

心療内科・精神科のクリニックは、専門的な治療や検査をしない限り、設備投資はレセコン・電子カルテの導入程度で済むため、開業費用は医科診療所の中で最も安い部類に属します。ビルテナントでの診療の場合、コストを抑えれば1000万程度の開業資金でも開業が可能であるため、分院展開を積極的に行う医療法人も多く存在しています。

一方で心療内科・精神科クリニックは医院数が増加しています。精神科医によって運営されているクリニックに加え、内科など、精神科以外のクリニックが心療内科を標榜するケースも増えています。他のクリニックとどのように違いを出していくかを考えて開業を検討する必要があります。

開業資金

土地/建物:約1,000万~
設備:約400万円~
(電子カルテ、レセコンなど)


耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科は、メインの患者層は小児ですが、少子高齢化を見据えて「高齢の患者様のシェアを狙うのか」もしくは「診療圏を広げ小児の患者数を減らさないようにするのか」、戦略を決定する必要があります。

また、耳鼻科の患者数は全診療科目の中でも非常に多く、医師は短時間で患者を診察しなければなりません。診察や検査、処方は診察ユニットごとに行われるため、いかに医師の診療動線を短く設計できるかがポイント。クリニックの適正規模は30~40坪前後です。

開業資金

土地/建物:約3,000万~
設備:約2,000万~
(電子カルテ、レセコン、耳鼻科診療ユニット、ネブライザ、X線撮影機器、聴力検査室、専用内視鏡 など)


小児科

小児科に来院される方は、小児と付き添いの親御さんがほとんどです。車や自転車で駆け込んでくる場合のことも配慮して、充分なスペースを確保した駐車場・駐輪場を設置しましょう。

また、水痘、おたふくかぜ、麻疹、風疹など感染性の強い病気の患者様用に玄関を分けてある構造のクリニックも増えています。その場合は、玄関に受付のスタッフを呼び出すインターホンを設置し、他の患者様と接しないように隔離室まで誘導できるような設計をする必要があります。

開業資金

土地/建物:約3,000万~
設備:約1,000万~
(電子カルテ、レセコン、X線撮影装置、自動現像機、超音波診断装置、心電計 など)


産科・婦人科

産科・婦人科の診察には患者様が不安を感じていることが多く、女性医師が所属していれば、そのことが大きなメリットになり、開業して成功できる可能性は高くなります。 妊娠初期の女性は、クリニックを探す際にホームページを利用する方が多く、予約制を導入するケースが多いため、ホームページ戦略が非常に重要になってきます。

開業資金

土地/建物:約3,000万~
設備:約2,000万円~
(電子カルテ、レセコン、コピー複合機、診察用ベッド、イス、内診台、X線撮影装置、自動現像機、超音波診断装置、コルポスコープ など)

多くの院長が勘違いしている借入の考え方
借入は開業時にできる限り“多く”借りた方がいい理由

見ていただいた通り、クリニック開業に必要な資金は診療科によって違いはあるものの、大体5000万円から1億円と高額になります。そのためほとんどの先生が金融機関から借入をすることになります。その際多くの先生は「借金は悪いもの一刻も早く返さなければ」と考えがちですが、実はここの考え方に落とし穴があります。

個人の借金と事業の借金は考え方が異なる

一般的に借金をしている個人に、人は良いイメージを持たないため、借金は悪いものと捉えがちです。しかしそれは個人の借入の話で、事業での借入となると全く別の話になります。

事業借入の目的は個人とは違い、事業を拡大することにあります。 借入金を事業に投下することで、売り上げや利益が増えますので、負債としてマイナスのイメージを持つ必要はありません。

逆に無理して借入額を最低限におさえた場合、肝心の事業資金の不足が経営難を引き起こし、売上や利益が出る前にクリニックの運営継続が困難になってしまえば、借入金がすべて無駄になってしまいます。 また、借金は悪いものだから早く返したいと考えると、返済期間を短くしてしまいます。返済期間が短いと月々の返済額が高額になり、経営と院長の生活を圧迫しますので、可能な限りゆとりを持った返済をすることが大切です。 重要なのは、資金的に余裕を持った医院運営を行い、ゆとりを持って借入を返済していくことです。 このゆとりを持った医院運営を行う上で重要になってくるのが「運転資金」です。

運転資金に余裕があるからこそ、早期に経営を軌道に乗せることができる

開業準備全体の予算組みは、言ってしまえば、テナント入居関連費や内装工事費、医療機器・机やイス、棚などの備品関係費、広告宣伝費などの予算をそれぞれ見積もればよいとも言えますが(実際はそれ自体にも慎重な計算が必要です)、難しいのが開業後の「運転資金」額の設定です。

運転資金とは、簡単に言えば、開業後の赤字の間をカバーする資金です。クリニックの場合、保険診療報酬が収入の中心になります。しかし窓口収入(売上の1~2割程度)はその場ですぐ手元に入りますが、保険収入(売上の8~9割)が入ってくるのは、その2カ月後になります。そのため、どうしても開業して最初の2カ月間は入ってくる収入以上に出ていくお金(家賃や人件費など)の方が多くなります。

よく「確保すべき運転資金は診療報酬額の概ね2〜3ヶ月分」と言われているようですが、これには明確な根拠があるわけではありません。開業直後から事業計画を上回る業績を達成し黒字化するクリニックもあれば、スタートダッシュが不調に終わり、開業後の患者数が1日数人で、1年以上経ってようやく単月黒字を達成する例もあるからです。 そのため、運転資金とは「損益分岐点に達し、キャッシュフローが安定するまでの期間をカバーする費用」と考え、入念なシミュレーションに基づく損益計算から算出するのが適切です。

上記のシミュレーションも簡易なものですが、診療報酬額だけを基準に機械的に決めるのはあまりに安易で、根拠が曖昧なままに開業した結果、数カ月後に資金繰りが厳しくなり、金融機関からの追加融資も受けられずに閉院の瀬戸際に追い込まれる危険性もあります。

金融機関は一般的に、事業計画の甘さによる運転資金の追加融資は非常に嫌がることも覚えておく必要があります。

開業後患者が集まらない理由は「認知されていない」こと
運転資金は積極的に広告宣伝に使う

借入金の有効な使い方として、ご自身のクリニックの宣伝や専門性のアピールなど集患に使うことがあげられます。開業時でよくある失敗が「支出を抑えるために、広告宣伝(ホームページや看板、新聞折込、内覧会等)の費用を削減した結果、患者が集まらない」というものです。

開業したばかりのクリニックは当然ですが、地域の方に存在すらほとんど認知されていません。どれだけ、経験豊富で勤務医時代に患者様から評判だった医師が開院しても、クリニックの存在はもちろん、先生の専門性や人柄、クリニックでできる治療などを地域の方に知ってもらえなければ、患者様はなかなか増えません。

開業医の場合、年収は患者数で決まる
1日の患者数が5人増えれば、年収は約590万円増加する

上図のように患者数が1日5人増えれば、売上ベースで約750万円の増加します。 売上が増えた分、経費も比例して増すのではないか? そうした疑問があるかと思われますが、「5人増える」ところがポイントです。

実際のところ、5人患者が増えただけでは、変動費、つまり診療材料費は売上の10%なので比例して増えても、そのほか家賃、水道光熱費、人件費、医療機器リース料や減価償却費などの固定費にはあまり影響がないのです。 そのため、患者数が1日5人変わっただけで、院長の年収は約590万円も増加するのです。

 

参考:勉強会セミナー

開業を成功させる一番のポイントは、事業主となる先生が経営者として成長することにあります。経営者としての考え方、視点、判断の方法を学ぶための勉強会です。

>クリニック開業基礎講座

>クリニック継承基礎講座

>スタッフ採用・育成基礎講座

>広告・集患基礎講座

>開業医の為の将来設計講座

まとめ

クリニックの開業資金は、自分がどういった患者様を中心に診察していきたいかを考え、それがかなうように配分する必要があります。初期投資がかさみすぎないよう抑えることは重要ですが、そこばかりを考えてしまい、肝心の運転資金や患者数を増やしていくため広告宣伝費がなくなってしまえばクリニックの運営そのものができなくなってしまいます。
何にどれだけの予算が必要なのか?そのためにはいくらの借入があれば十分なのかを詳細にシミュレーションすることが重要になります。

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