医院開業・経営の秘訣ブログ

2016年09月23日(金)

開業準備中の先生が知っておきたい資金調達の注意点

開業にあたって必要となる開業資金、その内訳はさまざまであり、資金調達にもいくつかの方法があります。それぞれの全体像を知り、開業スケジュールによってどう組み合わせるか、前もって計画を立てておくことで、クリニック開業における資金面での失敗を防ぐことができます。ここでは、資金調達の注意点についてご紹介します。

開業資金における理想的な自己資金の割合

開業にあたって、大きな心配事の一つとなるのが資金の問題です。多くの場合、開業には、マイホームを建てる時や、高級車を購入する時と同じくらいの大きな額のお金が動くことになります。もちろん、自己資金は多いにこしたことはありませんが、開業前のドクターは、30代後半~50代の方が多く、ちょうど住宅資金やお子さんの教育資金などもかさみ、人生において最も資金が必要な時期と重なってしまうことも少なくありません。

一般的に、自己資金は開業資金全体の10~20%を用意するのが標準と言われています。近年では金融市場で低金利が続いており、クリニック開業に対する審査の姿勢も良好であるため、自己資金の率を比較的低くして開業することも可能かもしれません。ただし、自己資金が手元にほとんどない状態では、融資審査において、場当たり的な思い付きの開業であり、経済観念にも疑問が残るということで、信頼度が低くなる恐れがあります。また、開業資金の見積もりが甘く、追加融資を申し込むことになると、計画が慎重でないと見られ審査が厳しくなると思われます。手元資金が少ない場合は、数年かけて開業資金の一部でも自己資金を用意したほうが無難でしょう。

クリニックを開業する場合に自己資金を都合すると言っても、その資金はご家族の皆さんとの共有の財産です。まず、ご家族に開業について説明し、同意を得ることが必要でしょう。開業にあたって今までの生活レベルを落とさなければならない、必要となる住宅ローンや教育資金が用意できないということにならないよう、ご家族にも同意してもらえるような地に足のついた計画に基づいて開業準備を進めることをおすすめします。

親族からの資金調達も、金融機関からの融資ではないため自己資金として考えてよいでしょう。自己所有物件の開業の場合は、物件の不動産所有名義についても確認する必要があります。また、開業後の税務調査では必ず自己資金の確認をされますから、自己資金が過去の申告内容から適正であるかどうか、勤務医時代の確定申告内容が適正であるかを確認し、アルバイト収入などの申告漏れがないよう気をつけてください。また、勤務医時代の源泉徴収票や、退職金の源泉徴収票、自己資金に充当された預貯金や株式の取引資料を整理・保管しておくことも重要です。

親族からの資金調達についての注意点

親族からの資金調達について、一番注意しなければならないのは、税務署に贈与とみなされ、多額の贈与税を課税されてしまうことです。これを防ぐため、親族からの借り入れであっても一般的な借り入れと同じよう、以下の要件を満たす必要があります。

①数年間にわたる返済期間を設ける

親族の年齢から考えて非現実的な期間を設定しないようにしましょう。返済期間は、事業計画書に基づいた収入の予想額から検討して、余裕のある期間で定めます。毎月、返済予定表通りの金額が親族の口座に振り込まれているという客観的な証拠を残しましょう。

②市場利率を参考として利率が採用されていること

無利子融資は贈与とみなされてしまうかもしれません。低利率でもよいので、一般的に考えられる数字で金利を設定します。

③契約書を作成すること

市販もしくはインターネットからの無料ダウンロードで「金銭消費貸借契約書」を作成し、取り交わしましょう。

これらを踏まえて、借り入れ条件、金利、返済方法、保証人、担保の有無を明確にし、契約書を整備します。返済方法は口座振替にし、記録を残すほうが良いでしょう。また、親族だからと言って、返済をないがしろにせず、滞りなく行うことが大切です。返済が長く滞っていると、贈与を受けたのではないかとみなされ、贈与課税される恐れが出てきます。

贈与の基礎控除額は110万円であり、返済予定額を毎年110万円までとし、その額の贈与を受けることで返済に代えようという計画は、返済計画全体が贈与と見られる可能性があります。返済資金そのものを別途贈与してもらい、そこから返済する形を取るほうが安全です。また、事前に税務署に申告することで、60歳以上の父母・祖父母から2500万円までの資金を贈与税無税で受けとることができる制度(相続時精算課税制度)があります。この制度は、贈与した人の相続の時に子の贈与資金を相続財産に加算して相続税を計算するもので、相続税がかからない範囲の人が行うことで世代間の資金移動が生前に可能になる半面、相続税の対象者は贈与分の相続財産が固定化されることで相続税が減らないということになります。メリット・デメリットをよく考慮したうえで利用すべき制度だと言えます。

開業資金の全体像と調達方法

用意できる自己資金についてある程度めどがついたところで、開業資金の全体像と調達方法を把握しておきましょう。開業時の資金計画について、失敗を防ぐためには、「何のための資金を、どのように用意するか」の組み合わせを知っておくことが大切です。つまり、開業資金の総額を何とか工面し、そこから様々なことに使っていくという考え方ではなく、使い道や支払いのタイミングにより適当な調達方法の組み合わせを考えるほうがよいのです。

では、実際にどんな局面でどんな支払いが発生するのか、その支払いに充てる資金はどのように調達したらよいのか、時系列順に見ていきましょう。

①テナント契約

テナント開業の場合は、場所の確保がしっかりできないと具体的な開業計画が進まないため、テナントへの手付金や諸経費、敷金などについては融資した資金が使えない場合があります。自己資金を使って支払うことが多いでしょう。また都心部の物件いついては契約時の諸経費が比較的高額になることがあり、潤沢に自己資金を用意しておく必要があります。

②土地取得・建築

土地を取得する場合、また建築や内装工事を施す場合には、第三者からも開業計画が実際に進展していることが明らかなため、金融機関などからの借り入れによって資金を賄い、支払うことになります。ただし、購入時に取得金などを支払う必要がある場合は一時的に自己資金を使う必要が出てくる場合もあります。

③内装工事

内装工事にかかる費用は、診療科目により大きく変わります。また、見積もりをとる場合に、診療科目の診察に必要な内装工事がなされるのか、きちんと確認することも大切です。追加工事が発生し追加の融資審査が必要になると、慎重な開業計画を組めていないとみなされ、審査が厳しくなる可能性があります。

④医療機器・備品

医療機器や備品についても、診療科目によりかかる費用が大きく変わります。設置する医療機器は、クリニックの差別化ポイントの一つになるものですから、何を購入するのが事業計画や先生の診療コンセプトに沿って考慮してください。医療機器を不当に高く買わされないために、①相見積もり(複数の事業者からの見積もりを取る) ②メーカーと値引き交渉を行う(相手も開業をされる先生とは、長期の付き合いになることを想定していますから、ある程度交渉の余地はあります) ③一つの代理店から様々な機器を購入し、値引きを求める ④知り合いの先生から価格情報を集める ⑤展示品などの新古品を紹介してもらう などがあります。

⑤諸経費・運転資金

医師会の入会費や開業時の広告、ホームページ作成費、消耗品、スタッフ募集にかかる費用、コンサルティング費用などについては、融資を受けた資金を充てることができるでしょう。運転資金については、すぐに使いきる性質のものではありませんから、自己資金が残っていればこれに充て、少ない場合は銀行融資を使いましょう。

まとめ

資金調達については、必要となる開業資金・自己資金・融資可能額の三点をまんべんなく鑑みながら進めていく必要があります。また、それぞれ必要となる支払いに、どのような方法で調達した資金を充てるかということも事前によく考えておくのが良いでしょう。迷った場合・困った場合は事業計画書に立ち戻り、先生の理想とするクリニックに向けてより良い方法を選択しましょう。

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