医院開業・経営の秘訣ブログ

2016年09月07日(水)

診療圏調査の具体的な内容と流れ

物件確定の際に欠かせないのが、開業地の周囲の市場調査や分析を通じて、 開業場所としてふさわしいかどうかを判断する「診療圏調査」です。今回は、何をどのように調査していくのか、具体的に解説します。

エリア内の人口情報・競合情報や、厚労省の「患者調査」を入手

診療圏の仮設定では基本的に開業物件を基点として半径500m圏内を一次診療圏、 500mから1000m圏内を二次診療圏として捉え、 物件を中心に地図上に同心円を描くことで診療圏を設定します。一般的な内科のクリニックでは、徒歩10分以内で来院できる一次診療圏が来院患者の80%を占めます。眼科などの専門性の高い診療科では、二次診療圏も加味して考えることになります。

次に、診療圏となるエリアの情報収集を行います。まず、対象地域における住民基本台帳に基づいた町丁別・年齢別人口を収集。加えて、出生数や死亡数、転入人口と転出人口、 昼夜間人口、世帯数、世帯構成なども入手します。これにより、診療所の周囲の地域住民の特性や生活様式、潜在患者数の推移などをつかむことができます。これらの情報は、行政関係のホームページを見たり、開業予定地の役所の統計資料室などを訪ねることで確認できます。

加えて、周囲の医療機関の状況も調べておきましょう。診療圏内にある病院、診療所の特徴について情報収集し、どこが競合になり得るかを分析しておくことは、自院の強みや経営方針を考える上で非常に重要です(関連記事:競合分析をもとに自院の「強み」を考える)。

続いて、厚生労働省が3年に1回実施する「患者調査」の結果を同省ホームページから入手しましょう。患者調査には、1日当たりの推計患者数を人口10万人当たりで算出した「受療率」のデータが掲載されています。このデータは、年齢別や男女別にもまとめられており、エリアの人口情報を照合することで、より精緻な分析が可能になります(後述)。

現実の診療圏に近づける

仮設定した診療圏は、物件を中心とした円で示されますが、現実の診療圏はそれほど単純ではありません。

例えば駅を挟んだ反対側のエリアから患者が来ないのは、駅の逆側へ渡るのが不便であるなど、何らかのハードルがあることが考えられます。同様に、交通量の多い幹線道路や河川を挟んだエリアからは、来院患者が一気に少なくなる傾向にあります。

また近くにスーパーなどの集客施設があるかも重要になってきます。一般的に意識される集客施設の代表は駅ですが、必ずしも駅から離れているから悪い立地という訳ではありません。その地域の方がよく利用しているスーパーなどの集客施設が近くにあるだけで、地域での認知度は格段に違ってくるのです。

受療率がら患者数を推定

より精緻な診療圏が設定できた後は、見込み患者数の推計を行います。ここで利用するのが、先述の受療率のデータです。

例えば、東京都で皮膚科診療所を開設するとしましょう。傷病大分類の「XII 皮膚および皮下組織の疾患」における10万人当たりの受療率は161人。仮に開業予定地で診療圏として見込んでいるエリアの人口が3万人だとすれば、1 日当たりの推計患者数は、

161人×3万人÷10万人=48.3人

となります。つまり、診療圏内に競合医療機関が全くなく、診療圏を超えた患者の出入りがないと仮定すれば、この皮膚科診療所は1日50人弱の患者を見込めることになります。

地域住民の年齢層も重視

皮膚疾患は年齢によってそこまで受療率に差がありませんが、例えば「X呼吸器系の疾患」の中の「受療率」を見てみると、14歳までの小児が多いことがわかります。逆に 「IX循環器系の疾患」の「高血圧性疾患」は、50歳代くらいから急激に患者数が増えていることがわかります。

このように、年齢別の受療率と、診療圏の年齢別人口構成とを照らし合わせれば、推定患者数をより細かく分析できます。ここ数年間の人口構成の推移も見れば、将来性を判断することもできるでしょう。

こうして得た推定患者数は、事業計画をつくる際の推定収入に直結します。診療圏調査がずさんだと、事業計画も信用できず、資金調達に支障をきたしたり、開業後に資金ショートを招く恐れもあります。

このほか、昼間人口、夜間人口のデータや、現地調査でつかんだ時間・曜日ごとの人通りの多さなどは、診療時間を設定する際の参考になります。

診療圏分析をしていく過程で、その地域の医療ニーズもおのずと見えてきます。自身の強みをどうアピールしていくか、競合医療機関との違いをどう見せるかなどを分析すれば、開業の戦略立案に役立てるはずです。

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